2012年9月18日火曜日

2012 INDYCAR インサイド情報&ニュース:なぜ、ウィル・パワーはタイトルが獲れないのか? 復活を果たしたアンドレッティ・オートスポーツとチーム・ペンスキー、トップチームの明暗を分けたものは??

レースだけに集中できる状況で最終戦に臨み、ハンター‐レイはタイトル獲得に成功した。 Photo:INDYCAR LAT USA
 

最終戦前に2年間の契約延長を済ませていたハンター‐レイ
 フォンタナでの最終戦で初タイトルを獲得する前に、ライアン・ハンター-レイはアンドレッティ・オートスポートとの契約を延長していた。さらに2シーズンを過ごすことを決意してチャンピオンの座を争うレースに臨んだということだ。
 チーム・オーナーのマイケル・アンドレッティは、「ライアンと2013、2014年も一緒に戦うことになった。究極のチームプレイヤーである彼は、我々のチームにとって非常に重要な存在となっている。ライアン、マルコ(・アンドレッティ)、ジェイムズ(・ヒンチクリフ)の3人はこれからも協力し合い、チームをさらに大きな成功へと導いてくれると信じている」とのコメントを発していた。ハンター-レイは同じリリースで、「私はアンドレッティ・オートスポートというチーム、そして、チームのスポンサーの多くと深く関わって来ている。それらを今後さらに深めて行けることを楽しみにしている。来年から2年のことが決まっていることで、オフシーズンを存分に楽しむことができる。それは本当にうれしいことだ」と語った。
 ハンター-レイにはペンスキー入りの噂があった。実際にオファーは出されていたようだ。つまり、ハンター-レイはそれを断った。ロジャー・ペンスキーは面子を潰されて衝撃を受け、マイケル・アンドレッティは優越感や満足感を手にしたことだろう。”キャプテン”のチームで走れることを拒むドライバーなど、少し前までなら考えられなかった。これはちょっとした事件だと言える。

チーム・ペンスキー、名声にふさわしい実績をまたも残せず

 もっとも、近年のチーム・ペンスキーは、名声に見合うだけの高いパフォーマンスを発揮して来ていない。確かにウィル・パワーは3年連続でシリーズ・タイトルを争い、その前の年はライアン・ブリスコーが同じく最終戦までチャンピオン候補として戦っていたけれど、チーム・ペンスキーは6年連続でタイトルを獲得し損ねて来ているのだ。
 ロジャー・ペンスキーは、自ら作ったCARTを放り出して02年に彼のチームをIRLへ引っ越した。03年にはアンドレッティたち(前身のアンドレッティ・グリーン・レーシングだったが)もそれに続いた。このころからの歴代チャンピオンを見ると、

02年 サム・ホーニッシュJr. パンサー・レーシング
03年 スコット・ディクソン チップ・ガナッシ・レーシング
04年 トニー・カナーン アンドレッティ・グリーン・レーシング
05年 ダン・ウェルドン アンドレッティ・グリーン・レーシング
06年 サム・ホーニッシュJr. チーム・ペンスキー
07年 ダリオ・フランキッティ アンドレッティ・グリーン・レーシング
08年 スコット・ディクソン チップ・ガナッシ・レーシング
09年 ダリオ・フランキッティ チップ・ガナッシ・レーシング
10年 ダリオ・フランキッティ チップ・ガナッシ・レーシング
11年 ダリオ・フランキッティ チップ・ガナッシ・レーシング

と、11シーズンでペンスキー・ドライバーがチャンピオンになったのはたったの1回だけ。対してガナッシは4年連続を含む5回、アンドレッティも2年連続を含めた3回のタイトル獲得を果たしている。2チームがペンスキーより好成績を残して来ているということだ。
 もっとも、インディー500での優勝回数なら、通算12勝でも、上記の期間内の優勝数でもペンスキーはトップを保っている。しかし、それは02年のエリオ・カストロネベスによる疑惑の優勝を彼らの勝利と勘定した場合(今やそうせざるを得ないが)で、カウント期間を強豪たちが揃って参戦を始めた03年からの10年間に換えると、ペンスキーとガナッシは3勝でタイ。アンドレッティが2勝で続いている。



チームマネジメントの差で敗れたチーム・ペンスキー
固定化した3台体制に次なる一手はあるか??

大破したパワーのマシンを修復し、能力の高さを見せたチーム・ペンスキーだったが……。Photo:INDYCAR LAT USA

 常にトップ争いを行う力を維持するのは非常に難しい。チーム・ペンスキーがトップ・チームであり続けているのは事実で、彼らの能力は敬意を払うべき高さに保たれて来てはいる。しかし、本当のシリーズトップと呼べる存在になれずに随分と長い時間を過ごして来ていることもまた事実なのだ。実際、近年のチーム・ペンスキーに作戦の悪さで自らを窮地に追いやるケースが多く目につくし、ドライバーたちにも名門チームらしくないミスが少なくない。今年のタイトルを彼らが獲り損なったのは、彼らのマネジメントがパワーの性格や能力を把握し、力をフルに引き出す環境を整え切れていなかったのが原因だ。

パワーの決勝前のモチベーションもハンター‐レイに及ばなかったのか? Photo:INDYCAR LAT USA

 アンドレッティは07年に9勝を記録したが、2年後の09年には勝利ゼロだった。彼らはトップコンテンダーの座から転がり落ちても、3年をかけて再びチャンピオンチームに上り詰めることができた。しかし、成績不振に陥ったまま、二度とトップレベルに戻って来なくなるケースもレースの世界ではよく見られる。10年に同じく9勝を挙げたチーム・ペンスキーは、11年には6勝したものの勝てたのはパワーだけだった。そこから彼らは、エリオ・カストロネベスが2勝、ライアン・ブリスコーも1勝と全員が勝てる体制へと実力アップをさせて来た。アンドレッティがしたような一気の凋落が今すぐ起こることはなさそうな気配だ。しかし、彼らがタイトルを獲得するためには、13年に向けてチームを大きく改造したり、補強を行うなどのテコ入れが必要だろう。2カーへの縮小は復活を更に難しくするかもしれない。同じメンバーでの3カー維持でも飛躍は難しそうに見える。果たして、彼らの打つ手はどんなものになるのか。
 

再び、アンドレッティの時代を築いていく方策は?
 
 アンドレッティが王座を保つためには、3カー体制をより強化することが必要だ。チャンピオンになって、ハンター-レイの存在感、影響力はチーム内で大きくなる。彼には更なるリーダーシップの発揮が求められる。来年もチーム内でのタイトル候補筆頭はハンター-レイになるが、チームメイト3人が揃って勝利を重ねられる体制へとレベルアップを目指さねばならない。マルコは最終戦でポールポジションを獲得、チームメイトに対して明らかに劣っていた窮地はそれなりに改善された。これは大きなプラス材料だ。ヒンチは移籍したばかりのビッグチームでもすぐさま居場所を確保、今シーズンも力を大きく伸ばした。彼のさらなる戦闘力アップも来年は楽しみだ。資金確保はまずまず順調に進めて来れているアンドレッティ・オートスポートなので、3人のドライバー全員がメリットを享受できるエンジニアリング体制を構築できれば、さらに勝利数は伸びて行くだろう。

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