大変興味深い予選となった。第一セグメントは2グループともドライだったが、第二セグメントがウエットとなり、ファイナルステージはまたドライコンディションに戻ったのだ。マシンセッティングをどうすべきかの判断を含め、チームとドライバーはとても難しい選択を行わねばならない戦いとなっていた。
非常にエキサイティングな予選でもあった。第一セグメントの第一グループでトップタイムをマークし、ポール候補としての名乗りを上げたかに見えたウィル・パワー(チーム・ペンスキー)は、第二ステージでまさかの敗退を喫した。それは、チームメイトのライアン・ブリスコーが最終ラップにトップ6に食い込んだためだった。
昨年度ポールウイナーの佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、第一セグメント第一グループを楽々3番手でクリアすると、ウエットでの第二セグメントでは水を得た魚のように元気に走り回り、トップタイムをマークした。
残念ながら、彼らのアドバンテージとなっていた雨は、そこで止んだ。ファイアストン・ファスト6は全員がオルタネートタイヤ使用のドライコンディションでの戦いとなった。それでも琢磨は果敢に一番手でコースインした。10分間と短いセッションで、雨が降り出す可能性も見込んでのことだった。
しかし、琢磨とはまったく逆に最後までコースインを遅らせる作戦に出たライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポーツ)=RHRに天は味方した。雨は一切降らず、セッション終盤に最もタイヤの状態の良かったドライバーが有利となったのだ。少しでも雨が降っていたら、RHRのポール獲得はならなかっただろう。実は、彼らが最も大きなギャンブルに出ており、それを成功させたのだ。今回は彼らの選んだ「待ち」という作戦が正解だったのである。
ただし、RHRはトロントでのレース後に予定外のエンジン交換を行っているため、10グリッド降格のペナルティを受ける。明日のレース、彼は11番グリッドからスタートせねばならない。RHRに代わってポールポジションからスタートする権利を得たのは、ダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ・レーシング)だ。
RHRは、11番手グリッドからでも優勝=4連勝を狙っている。プッシュtoパスの使用時間が、トロントでの100秒から120秒へと今回は大幅に増やされるし、何より、彼が3連勝を飾って来ている3レースは、いずれもフランキッティがポールスタートで、今回も彼はペナルティによってポールをフランキッティへと譲ることになったのだ。
フランキッティの隣り、フロントロー外側はライアン・ブリスコー(チーム・ペンスキー)のものとなった。2010年のテキサス以来となる優勝が彼とすれば欲しいところだ。
琢磨は2列目イン側という好位置からスタートを切る。ブラジルに続くキャリア二度目の表彰台、そして初優勝が狙える位置だ。
琢磨の隣りはアレックス・タグリアーニ(ブライアン・ハータ・オートスポート)。母国カナダでのレースだけに、彼の意気込みには強いものがある。その想いを今年は空回りさせず、シュアーな戦いぶりを見せて欲しい。
パワーは6番手スタート。当然、このポジションからも優勝は十分に狙える。そして、悲願のタイトル獲得に向け、彼はエドモントンでの連勝を強く欲している。
スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)は、RHR同様に10グリッド降格(理由は彼のエンジンが今季6基目のため)となるため、予選8位だったが18番手という後方からのスタート。ランキング4位とタイトル争いから遠ざかりつつあるが、ここで流れを取り戻したいと考えていることだろう。
残りレースはエドモントンを含めて5戦となっているが、タイトル争いの行方は混沌としたままだ。RHR、パワー、カストロネベスのトップ3が47点差、ランキング4、5、6、7位のディクソン、ジェイムズ・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポーツ)、トニー・カナーン(KVレーシングテクノロジー)、シモン・パジェノー(シュミット・ハミルトン・モータースポーツ)までが72点差の中に収まっている。まだまだ驚くような大逆転でさえ可能なのだ。
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