Photo:Naoki Shigenobu |
ホンダ勢、いきなり思わぬ苦境に
プラクティス6日間を順調に進め、上位で戦える確信を掴んでいた佐藤琢磨とレイホール・レターマン・ラニガン・レーシング(RLL)だったが、ブースト圧を高める予選用の特別ルールでは、ホンダ・エンジンが突如としてシボレー・エンジンに対して不利に陥り、予選結果は不本意な19位に終わった。その不利な状況は予選でだけで済み、競争力をレースでは取り戻せるもの……との期待もあったが、予選2日目のバンプデイに、すでに予選アタックを終えている者がコースで決勝用セッティングを施して走り出すと、実はシボレー勢のパワーアドバンテージが決勝モードでも存在することが判明した。インディアナポリスでの走行開始以来、ずっとパワーを隠したまま戦っていたのだとしたら、彼らのその作戦は見事な威力を決勝レースでも発揮しそうである。思わぬ苦境に追い込まれたホンダ陣営、RRL、そして琢磨は、これからの1週間で、逆襲のためにどんな策を用意できるだろうか?
「シボレー勢の速さはショッキングでした」
Jack Amano(以下――):今日は90周も走りました。今日のプログラムを教えてください。
佐藤琢磨:予選を終えて、今日はレース用セットアップに集中しました。先週の予選トリムを始める前のマシンに戻し、予選に向けた木曜、金曜のデータも使って今日は走りました。ほとんどがトラフィックの中での走行でした。単独走行はエアロバランスとか、その他のパラメーターをチェックするだけで、あとはトラフィックを探して走っていました。
――成果については、どう評価していますか?
佐藤琢磨:成果は……非常に厳しいレースになりそうだ、というのがわかったことでした。
――マシンのバランスが悪化したのですか?
佐藤琢磨:今日は気温が上がってました。先週と比べてもいちばん暑かったのと、湿度も上がってました。それによってクルマのバランスが大きく変わって、技術的な部分を話すと、気温が上がったことでエンジンのクーリングも厳しくなって、クーリングパネルを開けるんですが、そうするとダウンフォースが減るんです。それは他のチームも同じことをやってるんだけれども、中でもショッキングだったのはシボレー勢の速さですね。先週一週間、僕らは130のブーストで走っていて、予選は140でした。それが彼らは先週が120とかで走っていて、140で予選にした。
――それで彼らのパワーアップが大きかったってことですか? 今日の彼らはホンダと同じブーストですよね?
佐藤琢磨:はい。今日は勿論130になってるはずです。
「彼らと我々ではリヤウイングのアングルが全然違う……」
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佐藤琢磨:はい。リヤウィングを見ればわかるけど、全然彼らと僕らではアングルが違う。彼らはゼロとかマイナス1とかで、ビームにガーニーもつけてる。僕らはマイナス4とか5で同じスピードだから。そうするとダウンフォースの量が全然違って、こっちは前のクルマにつくとマシンのフロントが流れちゃうか、うまくルーツを使ってセットアップをしても今度はリヤが流れちゃう。だから相手に近づけないんですよね。だから今日、ホンダ同士で何度か走ってたけど、シボレーが抜いているところは見れても、上の方のチームでホンダがシボレーを抜いたシーンて誰も見てないと思う。ホンダ勢はみんな同じ状況になってますね。
――シボレー勢のことを佐藤選手に聞くのもヘンなんですが、彼らがもし先週、敢えて低いパワーで走っていたとしたら、その状態でもちゃんとマシンセッティングってできるものなんですか?
佐藤琢磨:できますよ、それは。特にエアロスキャンとかは、1度ずつウィングを変えたり、ディフューザーのパーツを変更したりして、どれぐらいエアフローが変わるか、スピードによってどれぐらいダウンフォースが変わるかっていうエアロマップができるんで、予選日にこれだけパワーアップして、これぐらいのダウンフォースが生まれて、コーナーはこれぐらいだとこれぐらい曲がれるっていうのは計算でできます。
――そういうものなんですか。
佐藤琢磨:あと、アンドレッティやペンスキーは走行初日、あるいは月曜日からずっとレース用セッティングをやっていたでしょ? あの中で、どれぐらいトラフィックに入って、ダウンフォースが抜けた時にメカニカルグリップを上げてバランスシフトを小さくするかっていうのを徹底的にやって来たワケですよね。そうやって今日に備えてたんでしょう。
「カーブデイからの新しいエンジンがプラス要素になるかも」
――ホンダとして、ユーザーチームへの空力面でのアドバイス、あるいは情報提供はなされているんですよね? HPDと親密な関係にあるワースリサーチが毎レースに来て。
佐藤琢磨:もちろんやっています。ホンダはホンダ勢同士である程度のデータ共有と、ワースリサーチから来るCFTのデータとを併用しながらマシンセッティングをやっています。
――その点ではシボレーが、より積極的なというか、強力に情報提供などをチームに対して行っているということですかね?
佐藤琢磨:間違いなくシボレーの方がシミュレーションは上手だったということですよね。大きなエンジンパワーを使って大きなダウンフォースを生み出して……ということなんでしょうね。
――予想外の展開になっていますね?
佐藤琢磨:今日は先週のコンペティションレベルに戻ると思っていたので、そうならなかったのはすごい厳しい1日でしたね。ショックでもあった。でも、そこで僕らは更にスピードを上げて行かなくちゃならない。そうやって走っていると、スピードを上げれば上げるほどトラフィックの中で走りづらいクルマになって来るという悪循環だったので、自分たちの中でもかなり混乱していたという部分がありました。データを見直して、クルマを作り直してもう1回走って……ということになりました。最後の残り15分でコースに出るなんて、この一週間、レイホールのチームには無かったんだけれど、今日は
それぐらい切羽詰まってやってましたね。
――カーブデイからは今年2番目の世代のエンジンが投入されますよね。それによって差が縮まるという期待はありますよね?
佐藤琢磨:そうですね。今週、全チームがプラクティスエンジンを使っていて、カーブデイからレース用エンジンになります。僕らの場合はブラジルで新エンジンにスイッチしたので、ブラジルのスペックのまま走ってましたけど、そういう意味でレース用のエンジンは多少良くなる可能性があります。僕がいま積んでいるエンジンは、マイレッジがもうほとんど終わりに近づいてもいたから、それによるパワーダウンとかがあるとすれば、新しいエンジンになるのは少しはプラス要素かな、と思います。あんまり大きな違いはないかもしれないですけど。
――決勝に向けて他に行えることは何でしょう?
佐藤琢磨:今日は90周も走ることができて、暑い中、そしてトラフィックの中で走ったデータが採用れました。すごく貴重なものだと思います。それらをシッカリと、これからの数日間で分析して、少しでも力強く走れるパッケージにして、金曜日のファイナルプラクティスを走りたいですね。そして、そこでレースに向けた最後の仕上げをしたいです。
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