ロングビーチで勃発、ブラジルまでで解決した……かに見えていたホンダのターボ交換に関する事情とは、以下のようなものでした。
新規定エンジンで戦われる今年のインディーカー・シリーズは、開幕前に出場マシンやエンジンのホモロゲーションが行われ、その仕様はホイホイと簡単には変更できないルールとされていました。エンジン・サプライヤーの参戦費用高騰を抑えるためのルールです。
ホンダはシングルターボ、シボレーとロータスはツインターボの加給方式を採用しました。そして、すべてのメーカーが使っているターボチャージャーは、インディーカー指定のボーグ&ウォーナー社が作る製品です。
インディーカーの定めたエンジン規定により、シングルとツイン、加給方式は違っても、使用されるターボは性能が同じになるようにすることになっています。ここで言う同じ性能とは、同量の空気をシリンダーに送り込める能力を意味します。ところが、ホンダが開幕前のテストから使っていたターボは、シリンダーに送り込める空気量がシボレー&ロータスの使っているターボ×2と比べて少なかったのです。本来なら、開幕前にこのターボ交換は完了しているべきだったのですが、残念なことに、その時点で指定メーカーには、ホンダ勢全員に行き渡らせるに十分な数のターボがありませんでした。
第3戦ロングビーチ・グランプリを前にして、B&Wがようやく新ターボをデリバリー。ホンダはシリーズ主催者であるインディーカーの許可を得て交換しようとしたのですが、シボレーがこれに抗議を出しました。インディーカーはこれを受け入れ、ホンダのターボ交換をストップさせるよう指示するしかありませんでした。ホンダチームは、この問題に関する公聴会が開かれ、インディーカーが正式な回答を出すまでは、新ターボを使えなくなってしまったわけです。
インディーカーはロングビーチでのレース後、そして、ブラジルでのレース直前の木曜日にインディアナポリスで審議を行いました。3人のパネル(シボレーがひとり、ホンダがひとり、共同でひとりを選出)は、シボレーの抗議は却下すべき=ホンダの新ターボ使用オーケーという答えに至ったのでした。
かくしてホンダは、ブラジルでのレースから新ターボを使えるようになりました。ところが、シボレーがさらなる抗議を正式に提出しました。裁定に不服がある場合は、4月30日までにもう一度、再審希望の要求を提出できるルールとなっているのです。ブラジルでは、シボレーはそれを出さない……との話になっていましたが、実際には出しまていたのです。
ついに、ポリティカル・バトルがスタートしたということです。ブラジルでのホンダエンジンのパフォーマンスを見て、シボレーの誰かが強い危機感を感じ、ということなんでしょう。こうなってしまうと、HPDとイルモアの友好関係(去年まで一緒にエンジン開発と供給をインディーカーに対して行っていた)に頼ることなどできなくなりますね。彼らの関係があるからこそ、こういう事態にはならないと考えてたんですが、甘かったってことです。
シボレーとしては、ライバルであるホンダがパーツを交換することに抗議したかったのではなく、自分たちに何の知らせもなくホンダにパーツの変更許可を出したインディーカーの姿勢を問題だと捉えていたようでした。しかし、そうした理解は間違いだったようです。イルモアはそう考えていたかもしれませんが……。
ホンダが新たに採用するターボについてイルモアは、それが技術的に、彼らがシボレーエンジンで使っているツインターボと同等の性能を持つ、つまりは公正なものであることを理解しているはずです。しかし、シボレーは今回こういう行動=再抗議に出ました。その目的が、次のレースであるインディー500で、ホンダが新ターボを使えないようにするところにあるのは明らかです。
旧ターボと新ターボの違いは図面や写真を使わないとクリアな説明がしにくいため、現在そうした材料を探しています。概要を説明するなら、ターボのハウジングが新型では大きくされ、空気を送り込む量を増やせる構造になっているということです。
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