インディーカーのターボ問題が解決された。ロングビーチでの第2戦前に下されていた決定は覆らず、ホンダ=シングルターボ方式=が使用するターボハウジングは、0.71A/Rというサイズのものが合法であるとの裁定が下された。
「我々に何も報告なしにライバルメーカーに新パーツ使用を許可するとは、受け入れ難い」というのがシボレーの最初の抗議の理由と見えていた。実際、このトラブルの発端はそこにあったようだ。
しかし、途中かれこの問題は政治的な面が大きな影響を及ぼすものになった。いかにもアメリカ的な、裁判好きで、裁判沙汰を得意とするお国柄が残念ながら出てしまった印象だ。
インディーカーは、ホンダが開幕前の合同テストから使用していたターボハウジングのサイズが小さく、ツインターボ勢(シボレーとロータス)と同量の空気をシリンダーに送り込めないとの見方を固めていた。しかし、インディーカーが指定しているターボのメーカー=ボーグウォーナーには、ホンダユーザー全員に行き渡らせるだけの大型ターボを持っていなかった。彼らはそれを急遽生産し、第3戦ロングビーチに間に合わせた。
ところが、ロングビーチでのプラクティスに向けてホンダエンジンユーザーチームがターボの交換に取りかかったところ、シボレーがインディーカーに猛烈に抗議。ロジャー・ペンスキーを含めたシボレー陣営の剣幕ぶりにインディーカーはおよび腰になり、ホンダの大型ターボハウジング使用許可を一旦凍結させる決断を下したのだった。
第4戦ブラジルの前にインディーカーは審議会を開き、選ばれた3人の審議官たちは新ターボが合法であるとの判断を行った。
ブラジルでのホンダ勢は、初めてツインターボ勢と同等のパフォーマンス獲得が可能な大型ターボ装着で実戦を行うこととなった。
シボレーは、この裁定に不満を持ち、再度抗議を提出した。ここから事態は完全なるポリティカル・ゲームへと変わった。シボレー陣営にシングルターボが不利な状況=ホンダの不利=自分たちシボレーが有利=を定着させようという思惑が生まれたのだ。ブラジルでのホンダエンジンのパフォーマンスの良さに彼らが驚いたことも大きく影響してのことだろう。抗議提出の期限は、ブラジルでのレースの翌日だった。
幸いにも、インディー500の公式練習開始前日、ギリギリで最終決定は出された。それは、ホンダの新ターボ使用オーケーというものだ。インディーカーの依頼により、インディアナ州の元最高裁判事であるセオドール・R・ボームがシボレーの抗議を却下。インディーカーが以前に一度決定したとおり、シングルターボ用のコンプレッサー・カバーのサイズは0.71A/Rとすることと決定がなされた。
インディーカーのルールでは、今回のように二度目の抗議が出され、それに対しての二度の裁定が下された場合、二度目のものが完全な最終決定とされる。所謂二審制というヤツだ。もう同じ件でのこれ以上の抗議をインディーカーは受け入れないし、今回の決定は覆ることもない。
ホンダ陣営とすれば、インディーから晴れて大型ハウジングのターボを使えることになるわけだが、シボレー軍団とすれば、今回の裁判では敗れこそしたものの、抗議をしただけの成果は十分に得られた……と評価していることだろう。彼らは少なくとも、ロングビーチでホンダ勢がパワーのあるエンジンを使用できない状況を作り出すことには成功したからだ。決してそれだけが理由ではなかったが、シボレーユーザーのチーム・ペンスキーが開幕から負けなしの4戦連優勝を記録している。
大型ターボハウジングを手にしたホンダ勢は、最大出力が重要な要素であるインディー500でどのようなパフォーマンスを対シボレーで見せるのか、とても興味深い。
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