2012 INDYCARレポート：5月27日 第96回インディアナポリス500 決勝 佐藤琢磨、優勝を懸けたアタックでクラッシュ！

天候：快晴
気温：31～32.5℃

Photo：Naoki Shigenobu

ダリオ・フランキッティ、インディー3回目の勝利

　ダリオ・フランキッティ（チップ・ガナッシ・レーシング）がインディー500での3勝目を飾り、チップ・ガナッシはオーナーとしての5勝目を挙げた。予選16位だったフランキッティだが、カーブデイのファイナルプラクティスで最速ラップをマークした。マシンのセッティングが良かったためだ。そこをベースとして、彼らは決勝日の暑いコンディションに対する調整でも最も成功を納めていた。さらに、不利と見られていたホンダV6シングル・ターボがパワフルさを発揮した。しかも、ホンダV6は燃費でシボレー勢を完全に凌駕していた。エンジンに関する形勢は、予選時とは完全に逆転していた。
レース終盤に何人かのシボレー勢がトップグループに加わったが、その中で最も速かったエド・カーペンター（エド・カーペンター・レーシング）は単独スピンで自滅した。その後にマルコ・アンドレッティ（アンドレッティ・オートスポート）がアクシデントを起こした。これらの連続アクシデントがあったことで、トニー・カナーン（KVレーシング・テクノロジー）らが上位との差を詰める恩恵を授かった。
しかし、最終的には戦闘力に優るガナッシのフランキッティとスコット・ディクソン、そして佐藤琢磨が優勝を賭けた争いを繰り広げた。

佐藤琢磨、あくまで優勝目指し、最終ラップ躊躇なく勝負に

　残り3周でディクソンがトップに立ったが、残り2周で今度はフランキッティが再逆転。この時、琢磨はフランキッティに食らいついたままターン1へと飛び込み、ディクソンをパスして2位へと浮上した。
最終ラップはフランキッティと琢磨の一騎討ちになった。その最初のターン、琢磨は躊躇なく優勝に向けたアタックを行った。ターン1へのアプローチでイン側へラインを寄せて防御を計ったフランキッティ。しかし、その更にイン側へとドラフティングを抜け出した琢磨がノーズを突っ込んだ。2台はサイド・バイ・サイドでターンイン。その直後に琢磨のマシンがスピンした。コース内側の白線を左側のタイヤが越えるところまでラインを寄せられ、琢磨のタイヤはグリップを失ったのだ。
フランキッティは奇跡的に接触を避け、ターン1を通過。すぐさまイエローフラッグが出され、フランキッティの優勝が決定。2位はディクソン、3位はカナーンとなった。

厳しかったフランキッティのライン
　琢磨は1周遅れの17位。2位に甘んずることなど考えず、優勝を目指した戦いを挑んだ結果だ。彼は無謀だったのか？　そうは思わない。あのアクシデントの起きた1周前、彼は同じ場所でディクソンを一触即発でかわしている。先行していたドライバーが、アタックをして来たドライバーにギリギリ1台分のスペースを与えていたからだ。ところが最終ラップのフランキッティは、ディクソンより遥かに厳しいライン採りを行っていた。
「インディー500の最終ラップなのだから、あれは仕方がない」と言う人は多いだろう。しかし、「あの戦いぶりはフェアではなかった」という評価を下した人も少なくはなかった。超高速のオーバルレーシングでは、互いを深く尊敬し合うことが重要で、ギリギリのスペースを与え合って戦うことが求められる。
フランキッティは、「琢磨はアグレッシブなドライバーだ。あそこをチャンスと見たのだろう。インからのパスを試みた。彼がやったことは全て正しかったと思う。ターン1でリヤを滑らせたこと以外は。テレビのリプレイを見たが、彼はインに入るところでリヤのグリップを失っていた」と語った。
琢磨は、「最終ラップを迎える時にダリオのスリップに入った。勝ったと思った。ターン1を並んだまま回れば、ターン2でトップに立てた。その思惑通りにはならなかった。彼はもう少しのスペースを僕に与えるべきだった。そうなっていたら、僕らは並んだままコーナーを曲がれていた。僕のマシンはコース内側の白線を大きく越えていた。マシンの中央部が白線の上に来るぐらいで、もうほとんど芝生に乗っかってしまいそうで、マシンが滑り出した」と悔しさを話していた。
以上