2012年5月1日火曜日

2012 INDYCAR R4 SAO PAULO INDY 300 Race Day 決勝レポート:佐藤琢磨は最後尾25番グリッドから3位で自己最上位獲得。ウィル・パワーが今季3勝目、ブラジルでは無敗

2011 IZOD INDYCAR Series ROUND 4 SAO PAULO INDY 300
第4戦 サンパウロ インディ300

Streets of Sao Pauro
ストリート・オブ・サンパウロ
ブラジル サンパウロ州
全長:2.536マイル(=約4.081km)×55周
コースタイプ:ストリート

Race Day 決勝
天候:くもり
気温:22〜23度

 日本から見て地球の裏側にあるブラジル、サンパウロでのインディーカーレースは、今年で3回目を迎えた。そして、今年もウイナーはウィル・パワー(チーム・ペンスキー)だった。オーストラリアンによる3年連続優勝が達成されたわけだ。今年も地元ブラジルのドライバーは勝てなかった。そればかりか、2年連続で表彰台にブラジリアンの姿はひとりも見られなかった。

 今シーズン早くも3回目のポールポジション、ブラジルでは2年連続となるポールからスタートしたパワーは、75周のレースを2ストップで走り切った。スピード自慢のドライバーが1回少ないピットストップでゴールまで走り切ってしまったら、もう対抗のしようなんかない。彼がトップを脅かされるシーンは、もう一切見られなかったと言っていいぐらいだった。まさに、完全優勝と呼んでいいレースとなっていた。

 彼に対抗できたドライバーは、予選5位だったライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポーツ)=RHRだけだった。出走26台のうち、パワーと同じ2ストップ作戦で戦ったのは彼だけだった。1回目のピットストップを22周終了時まで引っ張った彼らは、もうその時点で明確なアドバンテージを手に入れていた。

 しかし、そのRHRもパワーには太刀打ちできなかった。ゴール目前に今回は2回のリスタートが行われたが、パワーはコールドタイヤで渾身の走りを見せ、勝利を諦めさせるだけのリードを28号車のアメリカ人ドライバーに突きつけた。

 2位に敗れたRHRは、「ウィルのここでの速さは驚異的だ。今の僕らのレベルでは歯が立たない。彼らのマシンは、ダウンフォースレベルに対してグリップがとても高いんだ。重要なコーナーであるターン4とターン10で僕らに比べてコーナリングスピードが一段高い」と脱帽していた。

 今季3勝目を挙げたパワーは、「厳しいレースだった。持てる能力のすべてを出し切って最後は逃げていたよ。勝てた理由は、レースを通じてミスをしなかったこと、作戦が良かったこと、そして、マシンを良いものに仕上げていたことだった」と話した。予選や決勝、かかるプレッシャーが大きい状況ほど高い能力を発揮するパワー。今年のサンパウロでの勝利は、まさに彼ならではのものだった。

 3位でゴールしたのは、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だった。予選直前のプラクティスでエンジンにトラブル発生。予選に出走できずに最後列の25番グリッドからのスタートを余儀なくされながら、彼は自己ベストリザルトとなる3位フィニッシュを達成した。

 オーナーのボビー・レイホール自らがピットで陣頭指揮を執るのが彼らのスタイルだが、今回も彼の決断力は素晴らしかった。琢磨より上位でフィニッシュしたふたりを除けば、ベストの作戦を採用していたということなのだ。そしてもちろん、その作戦を実現させるために必要な高いレベルの走りを75周に渡って行い続けた琢磨の奮闘もあった。「これこそが琢磨の真骨頂。絶対に諦めない。彼のそうしたスタイルで掴み取ったポディウムフィニッシュだ!」とレースエンジニアのジェリー・ヒューズは話していた。

 ホンダ勢は、今回のレースから装着するターボの変更を認められた。ロングビーチから使えるはずだった新ターボだが、シボレーからインディーカーに対して正式に抗議が出され、使用できなくなっていた。ホンダとしては、本当なら開幕戦から使いたかったのだが、十分な数のターボを用意できなかった。インディーカーはブラジルでのレースに来る前に審議会を開催。そこで「ホンダのターボ変更に問題なし」と裁定が出された(この件に関しては、近々別コラムで書きます)。

 ターボの変更があったことで、ホンダとシボレーのパワー差はなくなったようだった。あるいは、逆にホンダがパワーでの優位を手に入れたかもしれない。第3戦ロングビーチのコースにはメインストレート(左に湾曲はしているが)があり、第4戦サンパウロの舞台にも長い、長いバックストレッチがある。そこでのトップスピードを比較すれば、パワーを比較できる。もちろん、ウィング角度の違いも大きく影響してくるので、スピードだけで単純に比較することは不可能だが、おおまかに言うなら、ロングビーチではシボレーが速かったが、ブラジルではホンダ勢が速かった。

 しかし、まだ燃費性能ではシボレーV6ツインターボが優位にあるようだ。2ストップで75周のフルディスタンスを走り切る=今回1、2位となったふたりが採用していた作戦はホンダ勢の場合、各スティントでフルコースコーションが出されるという、かなり楽観的な考えを持たない限りハナから検討が難しい状況にあったようだ。

 パワーとRHRの1回目のピットストップは22周終了後だった。予選2位だったダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ・レーシング)は、パワーにまったくついて行けないペースでの走行だったが、2周も早い20周終了でピットに向かっていた。彼は26周目のリスタートでマイク・コンウェイ(AJ・フォイト・レーシング)に追突されてスピンし、ストップ。リードラップの最後尾近くまで順位を下げながら、レース終盤には3位にまで挽回していた。チャンピオンドライバーとチャンピオンチームの持つ底力にはさすがのものがある。

 しかし、ゴールまで8周のリスタートで佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)に完璧なパスを決められ、エリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)との戦いにも敗れて5位フィニッシュ。彼の落胆が大きかったのは、4レース目で早くも3勝を挙げたパワーに、シリーズポイントですでに98点もの大差をつけられてしまったからだろう。

2 件のコメント:

  1. ラスト10周くらいでの異様に長かったイエローコーションは適正だったと思いますか?

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    1. 匿名さん、コメントありがとうございます。ご質問について、ジャックに確認してみました。返答が遅くなってすみませんでした。以下、ジャックの返事です。(更新係)
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      レース終盤のコーション、確かに長く感じましたね。クラッシュした67号車の除去にかかった4周が。しかも、そのすぐ後のリスタートで8台が絡む多重アクシデント発生。こちらもコーション3周でしたから。コーションの長さが適正か否かというと、セーフティクルーは考えられるベストの仕事をしていたと考えたいですね。彼らの作業をつぶさに観察していたワケではないので、その仕事ぶりに何の無駄もなかった! と断言はできませんが、彼らは頑張っていると思います。

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