2012年5月21日月曜日

2012 INDYCAR 佐藤琢磨コメント26:第96回インディアナポリス500 5月19日 Pole Day「このポジションはまったく喜べないし、悔しい。でも、うまく行けば1列グリッドが上がるかもしれないけれど、それをやることの労力とリスクとを考えて、レースに集中しようということに決めた」

第5戦 第96回インディアナポリス500マイルレース
Round 5 Indianapolis 500 mile Race

Indianapolis Motor Speedway
インディアナポリス・モーター・スピードウェイ
インディアナ州 インディアナポリス
全長:2.5マイル(=約4.023km)×200周
コースタイプ:オーバル

Race Day 5月19日
天候:晴れ
気温:26〜31℃

Photo:Naoki Shigenobu

予選前日に明らかになった高ブースト仕様でのシボレーエンジンの優勢は、予選当日になっても揺るがなかった。ホンダも短時間でできる限りの対策を施したというが、トップ9に食い込めたのがひとりだけという数字が示す通りに、インディー500での予選におけるパフォーマンス勝負は、今年はシボレーの圧勝ということとなった。
佐藤琢磨の予選は、エンジン面にプラスして、マシンセッティングもライバル勢を凌ぐものとはできず、19位という結果を得るにとどまった。初のトップ9入り、そして、ポールポジションを目指した戦いも可能! とプラクティス中には感じられたいただけに、悔しいポールデイとなった。


Jack AMANO(以下——)シボレー勢のスピードアップが昨日の時点で大きいと判明して、ずっと意気込んで来た通りの思い切った予選で戦うのが難しくなっていたと思うのですが、今日の予選を振り返って下さい。

佐藤琢磨:インディーのプラクティスが始まって、最初の方のプラクティスから今年は特に順調にプログラムを進めることができていました。スピードもペース良く上げて来ることができていましたよね。ドラフティングのかかっていないノン・トウの状態でずっとトップ10にポジショニングできていたので、昨日のファスト・フライデーは結構ショックでしたんですけど、今日の朝、ポールデイの土曜日の朝に僕らなりのベストをまた尽くしました。インディーのプラクティスは正午スタートなので、ずっと午前中は走って来てなかったじゃないですか。朝の空気は重たいし、スピードが出ないのはわかってたんですけれど、それを考慮に入れたとしても、今朝の僕らはスピードが伸び悩んでいましたよね。予選でも最善は尽くしました。しかし、スピードが思ったようには伸びなかったんです。

——今日はこれまでのプラクティス7日間より、さらに暑いコンディションになっていました。もちろん、それは全員にとって同じ条件ですが、スピードが出ない状況でした。

佐藤琢磨:確かにそうでした。それで、クジ引きによる予選アタック順が大きな影響をしていたと思います。11時に予選が始まった頃には気温もまだ低かったし、コンディションとしてはベストに近かったですよね。午前中の8時半という走行時間はちょっと早過ぎだったけれど、11時ぐらいだと路面はイイカンジで暖まって来ていて、まだ空気は少し冷たい状態で、あそこは良いコンディションだったと思います。ところが、僕が予選アタックをした午後1時頃っていうのは、もう気温も相当上がっていて‥‥まあ仕方ないですね。そこら辺はどうしようもない。最終的に予選順位は19位ですか? このポジションはまったく喜べないし、悔しいです。でも、状況を考えたら仕方がないです。

——2回目のアタックをしないという決断は、どのように下されたんでしょうか?

佐藤琢磨:最初のアタックで出したスピードから、多少は上げることができたとは思うんですけど、上がりシロはほとんど残ってなかった。いくつかポジションを上げることができて、うまく行けば1列グリッドが上がるかもしれないけれど、それをやることの労力とリスクとを考えて、レースに集中しようということに決めました。バンプアウトをされる心配はなさそうだったのでね。ミチェルの方は、その心配も少しあったので準備を始めましたけど、大丈夫そうだったので、チームの方針で2回目のアテンプトはしないっていうことになりました。残念だけれども、レースで取り返すって感じですね。

——夕方が少しでも涼しくなっていれば、スピードアップをさせる期待感も持てて、アタックをやろうという雰囲気が出たのでしょうか?

佐藤琢磨:今日はずっと暑いままでしたからね。僕らがもう1回アテンプトすることでトップ9を狙えるというんだったら、やる意味はあったと思います。トップ9に入れて、しかもポールを狙えるようなスピードを持っていたらね。KVRTのように、トップ9に入ってもアタックをしないチームだってあった。やっぱり、リスクとアウォードですよ。今日のアンドレッティ勢のように、ポールを狙えるんだったらアタックを何度もやるけれど、そこまでするリスクを負う必要がない感じでしたね、僕らは。

——チームのその決断に関して、今年の佐藤選手はスンナリ同意をしたのですね?

佐藤琢磨:いや、スンナリじゃないけど、まあしょうがないです。

——そうだったんですか?

佐藤琢磨:去年もね、悔しかったよね、10番手で、あとちょっとでトップ9だったのにアタックさせてもらえなかった。去年はあの時点からまだトリミングができたから。トリミングして走れたら“行ける”っていうのがあった。でも、雨が降りそうだってこともあって、リスクを冒してもしょうがないってことになったんです。今年も、レースが凄く大事っていうのはよくわかるのでね、そこはチームの判断に委ねました。

——実際には再アタックしたい気持ちもあったんですね?

佐藤琢磨:うん、あった。でも、去年みたいに“走ったら絶対に行ける”っていう感じではなかったし、もの凄いリスクを負わないと、今の自分たちはスピードを伸ばせない感じなんですよ。もうウィングは終わっちゃっている(寝かせられる限界に達している)ので。そうすると、それで万が一のことっていうのも嫌ですからね。今日の予選は、自分たちがこれまでやって来た中で最高の状態へとマシンを持って行くことができなかった。そこが悔しいですよね?

——今日の予選では、アタック4周の中でスピードが下がって行くドライバーが例年以上に数多く見受けられました。何が原因になってるんでしょう?

佐藤琢磨:タイヤのデグラデーションですね、間違いなく。ヒンチクリフはアタック前のウォームアップ・ラップで227mph出して、その後のラップではスピードがズリ落ちちゃってましたよね。あの予選の最後では、ライアン・ブリスコーだけが物凄い安定した4周とできていました。222.3〜5辺りで4周を揃えられてた。他のドライバーたちはみんなアタック中にスピードが大きく落ちていました。僕も最初の2周は何とか抑えられたんだけど、その後がやっぱり落ちちゃってた。今年の鍵はそこでしたね。午前11時から12時ぐらいまでにアタックした人たちは、4周ずっと安定していたと思うんですけど、ある温度から、湿度も関係あるかもしれないけど、みんなアタック後半のスピードが伸び悩んでいましたね。

——ウォームアップ・ラップを頑張り過ぎないように注意しているように見えたドライバーでも、1周ずつスピードが落ちて行くというケースが多かった。

佐藤琢磨:それはクルマのバランス、クルマの重量配分、タイヤの内圧調整‥‥と色々な要素が絡んでのことだと思います。

——今年のタイヤが特に摩耗が早い、というワケではないのですね?

佐藤琢磨:タイヤは去年と同じだと思います。

——新型マシンとのマッチングというより、今日の暑いコンディションによる影響が大きかったということですか?

佐藤琢磨:そうだと思いますね。

——さて、明日はどんなプログラムを組む予定ですか? 明日も走りますよね?

佐藤琢磨:予選は今日で終わり! 明日は完全にレースに切り替えて、ここまで淡々とデータを採って来たけれど、大きなトラフィックの中で走れたのは1日だけなので、上位勢はみんなレース・シミュレーションに入って来ると思うので、それに混じってトラフィックでのクルマの感覚を掴みたい。それと、僕らは木曜日から予選用セッティングを始めていたので、この3日間で得られたデータも決勝用セッティングに活かすことのできるものがあると思うので、それも調べるつもりです。

——この2日間は予選ブーストで速いマシンに乗っていました。また明日からは決勝用ブーストに戻る‥‥ということは、比較すると遅いマシンで走ることになるわけですが、何か感覚的な問題とかって出るものですか?

佐藤琢磨:レース用ブーストでエンジン間の差がまたなくなると良いんですけどね。スピードの感覚については、どうなんだろう? 経験したことがないですからね、ブーストが同じ週末で大きく変わるなんてことは。まあ、景色は凄く楽に見えると思うし、ダウンフォースももちろん付けて行く方向なので、今日のマシンだと単独でしか走れないけれど、明日からはトラフィックの中で走るので、絶対的なスピードというのはあまり関係なくなりますよね。

——では、明日のプログラムがスムーズに進むこと、祈っています。

佐藤琢磨:はい。ありがとうございます。

0 件のコメント:

コメントを投稿