Photo:Naoki Shigenobu |
貴重な1セッションが失われ、KVレーシング・テクノロジー・ロータスとしては、琢磨のマシンによる情報収集と、琢磨のフィードバックが得られなかった。これにより、彼らのミド‐オハイオでの戦いは後手後手に回らざるを得なくなった。プラクティス1終了後、トニー・カナーンは、「今回のセッションでは良い手応えを得られなかった。ランキングトップ10以内で30分しか走れないことも助けになっていなかった」と話した。琢磨は走れず、カナーンも大きな成果を得られなかった。EJ・ビソが2番手につけたのは、唯一の救いだった。
予選9位を得るが、決勝に向けて大きなセッティング変更を決断
プラクティス2回目に琢磨は3番手のタイムを出したが、まだ彼の表情は明るくなってはいなかった。好タイムはセッション終了間際に投入したフレッシュタイヤのグリップによるところが大きく、まだまだマシンのハンドリングに納得は行っていなかったということだ。
KVレーシングは3台あるマシンをフルに使ってより良いセッティングを模索し、3台によって得られたデータを分析して予選セッティングを決定した。そして、琢磨とビソが第2セグメントに進出。しかし、琢磨は9位、ビソは12位でともにファイナルを戦うことはできなかった。プラクティスから予選まで、ミド‐オハイオの路面コンディションは大きく変化し続けた。KVレーシングはマシンセッティングをそれらに迅速、正確に対応し切れなかったのだ。
予選後に彼らが自らに下した評価は、決勝に向けては大きな方針転換が必要だということ。レースを走るセッティングに対する最終的な判断を下すべきファイナルプラクティスで、彼らはほぼ決定しているセッティングにファインチューニングを施すのではなく、3台のマシンを使って新たな方向性を模索した。リスクは大きいが、優勝争いに加わることを目指す攻めの姿勢を選んだのだ。
琢磨はこのファイナルプラクティスで27台中の26番手に沈んだ。トップだったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)との差は1.7秒もあった。ビソがチーム内ベストだったが9番手で、ディクソンとは0.58秒の差だった。カナーンもディクソンから0.96秒遅れの17番手となるタイムしか出せなかった。
セッティング変更とユーズドレッドでスタートした戦略が見事的中
プラクティス2セッションと予選で得られた情報に、3台が30分のファイナルプラクティスを走って得られたデータが加わった。こららを総合してKVレーシングの決勝用セッティングは決められた。その結果、レースでの琢磨は序盤から安定した走りを見せた。ビソも彼の真後ろを走り続けた。琢磨はユーズドレッドでスタートしていながら、フレッシュレッド装着組と変わらないペースを保ち続けた。フルコースコーションはタイミング良く出され、その間に行なわれたピットストップも確実にこなされた。そして、2回目のリスタートでは琢磨がふたつのポジションアップをしてみせた。
チップ・ガナッシ・レーシングの2台など、トップグループを走るほとんどのマシンは、最後の勝負どころでユーズドレッドを履いていた。しかし、ユーズドレッドでスタートを切っていた琢磨だけは、最終スティントにフレッシュレッドが残されていた。KVレーシングの選んだ作戦は正しかった。ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)までオーバーテイクしての表彰台フィニッシュとはならなかったが、終盤のリスタートでのポジションアップには、新しいレッドが少なからず威力を発揮していたと考えられる。
Photo:Naoki Shigenobu |
ターゲットカラーの2台は今回も完璧に近い仕上がりで、ハンター-レイも3位入賞に値する速さを備えていた。今回の琢磨陣営の4位は、彼らが与えられた状況下でベストの仕事をしたことで得られたベストリザルトだった。トラブルなどの不運なくプラクティスと予選を戦えれば、琢磨たちがマシンをあと一段高いレベルに仕上げることは十分に可能。次にそうした戦いが実現できた時、彼らはトップ争いを見せてくれることと思う。
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