Photo:Naoki Shigenobu |
2011 IZOD INDYCAR SERIES R12 MoveThatBlock.com Indy 225
ニュー・ハンプシャー・モーター・スピードウェイ
ニュー・ハンプシャー州ラウドン
コースタイプ:オーバル
全長:1マイル(=約1.609km)×225周
予選8位から2位へと浮上した琢磨は、ライバル勢を寄せ付けない走りをポールポジションから見せていたダリオ・フランキッティの隣りからリスタートを切ろうとしていた。その時、右斜め前方を走っていた彼がマシンを寄せてきた。そして両者は接触! フランキッティの動きは、琢磨をコーナーのイン側ギリギリまで追いやり、小回りを強いることでスピードダウンさせる目論見だったはずだ。しかし琢磨は一切引かなかった。
フランキッティは、まだ勝利も表彰台フィニッシュもない琢磨を脅かそうとしたのだろう。チャンピオン争いをリードしている身として、「私にヘタなバトルを仕掛けても得にはならない」との印象を刷り込もうとしたのだ。しかし琢磨はフェアに戦い、自分のライン採りが正しいことをフランキッティに主張した。
その結果、フランキッティはクラッシュし、琢磨もリードラップ最後方の8位にまで順位を下げた。
それでも琢磨は諦めず、ひとつだけだが順位を上げてフィニッシュした。もっと上位でフィニッシュできていた感触はおおいにあった。それだけに悔しさも大きいレースとなった。
Jack AMANO(以下——)マシンの仕上がりは良かったようですね?
佐藤琢磨:はい、良かったと思います。1回目のピットストップで2位に上がって、最初のリスタート、僕は完璧なタイミングで加速ができて、1コーナーにはダリオと並んで入ってけるかと思ってたら、ギヤリングなのかエアロなのか、彼は速かったですね。プッシュ・トゥ・パスも使ってのリスタートだったんですけど、グイグイとストレートで離されて、結局また2位に落ち着くカタチでした。
——次のリスタートで接触。あれはダリオが寄ってきたように見えてましたが?
佐藤琢磨:そうですね、僕自身は真っ直ぐ走ってたつもりで、ダリオの方がこっちへ接近して来たっていう感じがありました。でも、僕がもう少しスペースを開けとくべきだったかなぁ、とも思います。まだリプレイを見ていないので何とも言えないんですけど、あぁいうカタチになったのことについては、思いもよらなかったです。
——琢磨選手をインに押し込めておきたいって動きだったと思います。
佐藤琢磨:そうですね。まだリプレイを見てないのでわからないですけど、僕としては近寄ってったつもりは全然ないし、確かに接近はしてたんだけど、ダリオが来た時にはコースの真ん中よりも内側にいたはずなので、うーん……まぁでも、もうちょっと間隔を開けておくべきだったのかなぁ。ダリオだから安心してたというか、まぁ信頼して、かなり接近した状態で1コーナーに入って行きたかったので、その考え方が裏目に出てしまいました。
——テレビでピットリポーターに対してダリオは最初、琢磨選手を一切批判しませんでした。最終的には「何で彼がラインを上げて来たのかわからない」といった非難するコメントをしていましたが、最初から怒ってはいなかったんです。彼は自分のしたことをわかってたんじゃないかな、と思います。ダリオは最初のスタートでも、リスタートでもアウト側を選んでました。このコースレイアウトでは、それは理論的ですか?
佐藤琢磨:そう思いますね。このコースでいえば、そうだと思います。ただ、最初のリスタートで僕は結構食い下がって行ったので、それを牽制したくて、2回目は寄せて来たのかもしれないけど、まぁいずれにしても彼の方が一歩リードしているところはあったので、あぁいうカタチでは僕が避ける場を作っておくべきだったのかな、とも思います。
——あのアクシデントでタイヤとウィングにダメージを受け、順位を落としましたね。
佐藤琢磨:タイヤがパンクして、フロントウィングに少しダメージを負ったので、緊急ピットストップでタイヤ交換をしました。それだけじゃなく、ウィングへのダメージによってフロントの空力にも影響が出ていて、クルマとしては最後は少し曲がりにくくなっていましたから、苦しいところもありました。
——それでも、またポジションを挽回して行けてましたね?
佐藤琢磨:はい。でも残念ながら、あぁいうカタチで2番手からのリスタートだったのにポジションを大きく落としてしまったので、あそこからはもう、とにかく挽回するしかないっていう勢いでしたね、自分としては。ただ、あの頃から雨が落ちてきていて、それが僕にとっての助けになってもいました。雨によってオーバーテイクをし易いコンディションが生まれてたので、僕としては逆にあれは凄く良かったと思います。
——ダメージの修理を行うことでピットタイミングがトップグループとズレて、レース終盤にトップに立つことになりました。しかし、次のピットインでまたポジションは後退……どんなことを考えて走ってたんでしょう。
佐藤琢磨:あの頃は、もう自分がどういう状況かよくわからなかったんです。自分としては、とにかくトップグループへと復帰することだけを考えてませんでした。ダリオとの接触のことをずっと引きずってもいましたから……。ポジションのことがよくわからない状況にもなってたんですが、自分がかなり上位まで順位を戻して来れているとは感じてました。ピットストップのタイミングがトップグループとは違うものになってましたけど、ゴールまで走り続けることだけを考えてましたね。
——今日は表彰台も狙えたレースになっていました。それだけに悔しいことと思います。
佐藤琢磨:結果に繋げられなくて申し訳ないです。ただ、最後のリスタートの時には雨粒が結構大きくなってて、路面もかなり滑り易くて、玉突き衝突みたいな感じで前が完全に詰まってしまって、あぁいうカタチでレースを終えてしまったのは残念だし、申し訳ないです。次、がんばります。
——しかし、最初の雨によるフルコースコーションの時より、最後のリスタートが切られる時の雨は強かったようにピットでは感じていました。路面などはどうだったんですか?
佐藤琢磨:1回目の雨によるフルコースコーションの時より全然悪かったですね、コンディションは。ジェット・ヒーターを使って路面を乾かしてた時の方がね。最後のリスタートはライアン・ハンター-レイがトップを走ってましたが、彼のセットしたペース凄く遅くて、もうみんな1速ギヤに近いようなスピードになってたので、列と列の車間が本当に小さくなっちゃってましたよね。それだから最後は玉突き衝突状態でした。
——ダニカ・パトリックがハデにスピンして、琢磨選手はウィル・パワーに後ろから接触してしまった……。
佐藤琢磨:はい、そうでした。もう前がみんな急ブレーキだったので、避けられませんでした。僕からはダニカがスピンしたのは見えてなかったです。
——ピットにいた僕としては、リスタートが切られるって聞いて驚いてました。強いってほどではないけれど、雨は確実に降ってましたから、もうレース再開は無理だろうなって感じてました。
佐藤琢磨:ちょっと、あの状態では、「今日はオーバルのレースだったよね?」ってカンジでしたよね。雨でしたね、天候は完全に。ただ、僕としてはスタートをしたかったんです。だって、僕としてはポジションを上げるチャンスだし、何とか順位を挽回したかったので、そのための大きなチャンスだったと考えていたし、狙ってました。
——確かに、ウィルとダニカをパスできていた可能性は十分でした。それにしても、今日はコールドタイヤでの戦いが非常に難しかったのではないですか?
佐藤琢磨:自分としては、最後のリスタート以外はうまく決められていたと感じてます。3回のリスタートの1回でスコット・ディクソンに抜かれたりとかはありましたけど、最後の前のリスタートは決めたし、燃料のセーブもうまくできていて順位を最後にひとつだけど上げたし、チームのストラテジーも良かったと思います。
——オーバーテイクがほぼ不可能では? スタート前には言われてましたが、オーバーテイク、多かったですね。
佐藤琢磨:コース上であそこまで多くのマシンを抜けるとは、僕自身思ってませんでした。それだけに、今日の結果は凄く残念です。
——目指す結果が得られていないとはいえ、このところずっとトップ争いに絡み続けていますから、今後のレースが楽しみですよね?
佐藤琢磨:はい。前進あるのみというか、しっかりとヤッパリ結果に繋げられるように、精一杯がんばります。
——次はソノマ。あのコースは去年苦戦気味でしたが、今年はどうでしょう?
佐藤琢磨:そのリベンジじゃないんですけど、来週行うテスト1日を本当に有効に使わないといけない。去年はミド-オハイオでのパッケージに凄く自信を持っていたので、それをソノマでうまく使おうとして大失敗しました。そして、それを今年のバーバーまで引きずってしまった。今年は完全にセットアップの方向性を変えて、ソノマのテストに挑みます。それでうまくパフォーマンスが上がることを期待しています。
——次のレースも楽しみにしています。
佐藤琢磨:はい、頑張ります。
いつも新鮮な情報やコメントありがとうございます。
返信削除毎回楽しみにしております。
最初、うわっ!これはプロベーションか?とかって考えもよぎりましたが、やはりダリオが寄ってますよね。何回観ても。ダリオのテレビインタビューの時も、ちょっと目が泳いでるように見えましたし..自分がやっちゃった、という雰囲気が肩から伝わってきた気がします。
タクマ選手も、目にゴミが入っちゃって...というコメントしてましたが、あれはテレビ用のオトナのコメントなんですかね。
毎戦、期待度がどんどん高くなってしまいますが、茂木前に、是非優勝を勝ち取ってもらいたいと思います。
残りもだいぶ少なくなってしまいましたが、今後もレポート楽しみにしております。
やまけん さん、コメントありがとうございます。フランキッティもかなり意識していた結果のアクシデントだったのではないでしょうか? ジャックもきっと、インタビュー時それを確認したくて琢磨選手に詳細に(個人的な印象としては若干、しつこいくらいに)質問をしていたという印象を受けました。
返信削除もてぎ戦まであとひと月程、優勝する姿を見たいですね。(更新係)