クラッシュし惰力で進むヒルデブランドをウェルドンがパス。この時、イエローは出ていなかった。 Photo:INDYCAR(LAT) |
オーバルレースでアクシデントが発生すると、イエローフラッグが振られるか、イエローライトが点滅してフルコース・コーション(直訳するならコース全域警戒)=スピードダウン&追い越し禁止になる。そこで今年のインディ500の最終ラップだが、トップを走っていながらルーキーのJR・ヒルデブランド(パンサー・レーシング)は最終コーナーでタイヤかすに乗り、激しくクラッシュした。当然、このアクシデントによるイエローは出されたが、彼はトップから2位へと順位を落としてのゴールとなった。セイファーウォールに跳ね返された彼のマシンは、もう一度壁にぶつかり、火花を散らしながらコース上をゴールへと滑って行った。その横をダン・ウェルドン(ブライアン・ハータ・オートスポート・ウィズ・カーブ/アガジェニアン)は、ストレートに出てからパスし、先にゴールへと飛び込んだ。
ヒルデブランドのウォールへのヒットはかなり激しいもので、大量の破片を撒き散らかした。しかし、イエローはすぐさま出されなかった。正確に計測してはいないが、ヒルデブランドが壁にぶつかってからウェルドンが彼をパスするまでには5秒ほどがかかっていたはずだ。
ウェルドンのパスは完全にアンダーグリーン
ウェルドンはグリーン下でパスを完了させていた。レース直後には、「ウェルドンのパスはイエローが出た後で、それはルール違反なのでは?」とも考えられたが、パンサー・レーシングはインディカーへ抗議を提出しなかった。プロテストがされたというウワサが流れていたが、それはウワサに過ぎなかった。
テレビの映像が、ウェルドンのパスがグリーン下で合法的に完了されていたことを鮮明に映し出していたのだ。
そのビデオを見ると、壁を擦りながら進むヒルデブランドをウェルドンはパスし、さらにスピードを上げられずに走っていたチャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ・レーシング)のマシンもゴールライン前で抜いていた。ヒルデブランドのアクシデントの原因になったマシンだ。そして、その直後にイエローの点滅が始まる。
コース全域に装備されたイエローライトをグリーンからイエローの点滅へと替えるのは、コントロールタワーに陣取る競技及びレーシングオペレーション担当社長のブライアン・バーンハートだ。彼がボタンを押すと、出場全マシンのコクピットにまでイエローライトが灯る。彼がボタンを押してから、ライトが点滅するまでに僅かの時差があるのは理解できるが、今年の最終ラップのイエローライト点滅は、アクシデント発生から長い時間がかかり過ぎていた。
ヒルデブランドはミスをした。優勝を棒に振っても何の不思議もない大きなミスだった。しかし、それでもルールに救われて優勝する可能性は残っていたのだ。しかし、現実の世界で物事はそのようには運ばなかった。
2002年疑惑の判定とイエローのタイミングの整合性は?
2002年の最終ラップが思い出された。ターン3でポール・トレイシーがエリオ・カストロネベスをパスし、ゴールを真っ先に横切った。しかし、優勝はカストロネベスのものとされた。オーバーテイクの前にターン2出口でアクシデントが発生し、コースはフルコースコーションになっていたというのだ。あのアクシデントに関して当時のオフィシャルは、発生直後すぐさまコースはイエローになったと主張していた。だからこそトレイシーのパスは無効とされた。ところが今年のアクシデントは、イエローが出されるまでに02年の100倍以上の時間がかかっていた。
この話はGAORAでの放送でも解説の松浦さんが言っていたのですが、
返信削除インディのイエローって、イエローの原因となったクラッシュしたマシンも追い越し禁止なのですか?
ヒルデブランドはクラッシュしたあともかなりのスピードで壁を擦っていったので、こういう話が出るのだと思いますが、もっと減速していても追い越し禁止なんでしょうかね。
初めてコメントさせていただきます。
返信削除私は素人なので詳しいレギュレーションは把握していませんが、今回のウェルドンの追い抜きはたとえイエロー提示後だったとしても許されていたと考えています。
アマノさんは、2002年の出来事を例に挙げておられますが、これと今回の事故とでは大きな違いがあります。
それは「オーバーテイクされた車がそのコーションの当事者だったか」ということです。
基本的にフルコースコーションが出れば全車追い抜き禁止になりますが「事故車、もしくはトラブルでレーシングスピードを保てなくなった車」を追い越していけないということはありませんよね。
今回ヒルデブランドはコーションの当事者ですので
「事故車、もしくはトラブルでレーシングスピードを保てなくなった車」にあてはめられます。
ということはウェルドンはイエロー中であろうが、ヒルデブランドをオーバーテイクすることは許可されるということにはならないでしょうか?
あくまで素人の考えたことですが。
かなり微妙ですね、Jrはクラッシュして惰性でゴールした訳だし、Danはただ自分のペースで走行してただけでしょう。
返信削除この辺はルールブックに明確に記載するべきだし、改めてインディのいい加減さが露呈した感がある。
02年の時もひどい物でしたが、もし競技委員長がBB?ならすぐさま辞めて貰いたい。
Kouさん、匿名さん(ひとりめ)、匿名さん(ふたりめ)
返信削除皆さん、ご意見ありがとうございます。
かなり微妙な問題ですよね……。ルールで決められていない限り、正しい答えというのはないような状態ですが、現地でレースを観たジャックが、これまでのケースと比較してどのように感じたかをまとめてもらいました。皆さんはどう思われるでしょうか?(更新係)
<以下、ジャックコメント>
イエロー中にパスしていいマシンは、コース上に止まっているものと、十分なスピードが出せないことをオフィシャルに伝え、さらに、メインストレート上で「パスしてくれ」と他のドライバーに指示を出しているマシンとインディカーでは規定され、「イエローを起こした張本人(今回のJR・ヒルデブランド)はパスしてもいい」というルールも、「スピードを落としているマシン(今回のチャーリー・キンボール)は抜いてよい」というルールもないはずです。
レーシングスピードであったか否か、その判定は難しい、もしくは不可能です。大幅減速していても、「私はレースをしていた」と本人が主張すれば、それはレーシングスピードと捉えられ得るからです。
今年の場合、イエローが出されなかったからウェルドンのパスは可能でした。減速しなかったと問題視されることもありませんでした。では、イエローになっていたのにパスをしていたらどうなっていたでしょう? ルールに従って減速をしなかったためにパスは可能となるワケです。危険行為の末の逆転は果たして許されたでしょうか?
2002年と今回とで確かに状況は違っていますが、ルールの施行が不確かだという点で共通しています。ヒルデブランドのアクシデントはマシンの破片を広範囲に飛び散らせ、オイルやフルードも撒き、ターン4とストレートを危険なコンディションに変えました。間違いなくイエローを即座に出すべき状況だったと思います。2002年は「アクシデント直後にイエローになった」というのが主催者側の主張で、ポール・トレイシーのオーバーテイクは無効とされました。ところが、今年はアクシデント発生から数秒も経ってイエローが出されました。ここに大きな問題はあると思います。