10番手スタートから500マイルという長丁場を、無理せず落ち着いて戦っていくというプランを立てていた琢磨。カーブ・デイのトラブルで決勝セットの調整が不完全な状態ではあったが、昨年の経験から十分に巻き返すことは可能だとわかっていた。だから、その場の順位は下がっても周回を重ねながらマシンを仕上げていき、最後に勝負をするつもりだった。
しかし、オーバルレースでは重要な存在であるスポッターのひとりの指示タイミングがあわず、全開で突っ込んだタイミングでインサイドにジェイムズ・ヒンチクリフ(ニューマン・ハース・レーシング)が飛び込んできた。琢磨は必死になってマシンを立て直そうとしたが、ウォールにヒット。あまりにも早すぎるリタイアとなってしまった。
しかし、オーバルレースでは重要な存在であるスポッターのひとりの指示タイミングがあわず、全開で突っ込んだタイミングでインサイドにジェイムズ・ヒンチクリフ(ニューマン・ハース・レーシング)が飛び込んできた。琢磨は必死になってマシンを立て直そうとしたが、ウォールにヒット。あまりにも早すぎるリタイアとなってしまった。
Photo:INDYCAR(Robert Ellis) |
Jack AMANO(以下——)お疲れ様でした。
佐藤琢磨:疲れてないですよ……。ホント、信じられない……。
——本当に残念なレースになってしましました。今日のマシンはどういう感じで、どういう戦いをしていたのか、そこを聞かせてください。
佐藤琢磨:クルマはちょっとスピードが乗るまで時間がかかるというか、やっぱりまったくレースのセットアップができてなくて、集団の中を走って行くとかなり抵抗を強く感じましたね。前のクルマに追いついて行っても、なんだかあんまり引っ張られるって感じがしなかったし、むしろ前に離されてしまってた。後ろから来たクルマにもあっという間に抜かれるというシーンもあって、ちょっと苦しかったですね。でも、長いレースなので凄く慎重に走っていたし、速いクルマが後ろから来た時には先にまず行かせて、自分がピットストップのタイミングが来た時に少しずつ後半に向けてクルマを作って行って、巻き返せばいいと思っていました。
——まだレースは序盤でしたからね。
佐藤琢磨:;はい、そうした戦いをやっている中で、ジェイムズ・ヒンチクリフが来たのだけれど、スポッターからの情報が届いていなかった。コミュニケーション不足というのかな……。インディは特殊で、スポッターをふたり使うんですよ。ターン3にはロジャー(安川)がいて、それは去年と変わらず。彼は的確な情報をくれるし、僕も凄く信頼している。彼とは仲もいいし問題ないんですけど、ターン1のスポッターは、実は練習日に僕、一度怒ったんですよ。割と初めの方のプラクティスだったと思います。全然情報をくれなくいので。それが彼のやり方なのか、僕のやり方を知らないって形でした。僕らはカーブ・デイもほとんど走れなかったでしょう? だから集団の中を走って、スポッターのことも確認してっていうのがないまま決勝を迎えないといけなかった。カーブ・デイとかに練習ができればよかったんですけどね。10カー・バック(10車身後方)なのか、5カー・バックなのか、ルッキング(並びかけるチャンスを狙っている)なのか、インサイドとか……そういう情報をくれるようにってお願いして、確認もしていたんですけどね。
——スポッターからの情報が足りず、アクシデントを招いてしまったんですね?
佐藤琢磨:彼の反応は凄く遅かったんですよ。あそこで何が起きたかって言うと、ターン1で、彼(ヒンチクリフ)のマシンが近くに来てるのはわかってたんですよ。でもミラーにはなかったので、彼が見てる(並ぶチャンスを伺っている)のか、もう内側にいるのか、まったくわからないまま、僕は自分のフルスピードで1コーナーに入ってってたわけです。そのコーナーへと入ってった途中で、いきなり“インサイド”(内側にマシンあり)って言い出した。そこまでは何も聞かされてなかった。いきなり入って来て、もうそれ以上切り込めなかった。でも全開で入っちゃってたからスピードが凄かったんですよ。僕のテレメトリーみたら、ハンドルがいきなりまっすぐに戻って、その状態から軌跡が完全に上を向いちゃったので、その後すぐに完全にスロットルを戻してからハンドル切ったんだけど、マシンはまったく言うことを聞かなかった。もうまっすぐそのままウォールに行っちゃったですよね。
——もったいないですねぇ。
佐藤琢磨:ありえないですよね。
——苦しいハンドリングではあったが、1回目のピットまでは苦しいながらも戦い続けるって感じでしたか?
佐藤琢磨:まだピットまでは時間があったのでね、コクピットから操作できるツールを使って、それでもまだ何とかあの辺りのポジションでは堪えられると思ってました。とにかく、最初のピットストップまでは我慢をしようと。あの時点では、ポジションを死守するとかは全然なかったですから。去年インディ500は十分に経験をしてるんで、巻き返しができるっていうのはわかってたし……。そういう意味では、こんなことになるなんてまったく思ってなかった。
——インディのような超高速オーバルでは、やはり無線の指示が的確か否かは、非常に大きいということですね。
佐藤琢磨:あの5周〜10周前にも、“指示が遅過ぎる”って1回言ったんですよ。その時も同じように、ターン1に僕が入ってから言ってきて、その時は何とかギリギリ大丈夫だったんですけど、“遅すぎる”っていうのを彼に言った直後だったんですよね、アクシデントは。ちょっと信じられないです、だから……。
Photo:Naoki Shigenobu |
——チームメイトの2台のどちらかを間違えて目で追いかけていたとかがあったのかもしれませんね。
佐藤琢磨:はい。EJとトニーにはあの前に先に行かれちゃってました。
——今日のレースは予報通りに暑さの中での戦いとなりました。チームの決勝用セッティングは、暑さ対策ができていましたか?
佐藤琢磨:そうですねぇ、ピタリではなかったですね、やっぱり。ただ、僕は決勝用セッティングで多くの周回を決勝前に走れてなかったので、余計にクルマのセッティングとの感覚のズレみたいのはあったのかもしれませんね。それで、最初はとにかく慎重にと思ってました。でもね、スポッターって本当に大事なんですよ。自分のレースを走るうちの一部だし、彼らのインフォメーションをもらって走らなきゃいけないのに、それがなくなっちゃったので、なんだかひとりで走ってるみたいになってて凄く不安でしたね。
——スタート時も情報不足を感じてたのですね?
佐藤琢磨:全然怖かったですよ、何も情報がなかったから。でも“クリア!”っていうのが聞こえてました。スタートの時は外のラインに出なかったし、自分の目で確認しながら走れてたので、そこは大丈夫でした。でも、その後からスピードが伸び悩んでましたね。
——ピットインしたら何を変えよう……という考えはすでにあったのですね?
佐藤琢磨:もちろんです。フロントウィングとタイヤの内圧を両方調整するつもりでした。リヤウィングはまだいじらなかったでしょうね。後半になったらそちらの変更もやったと思いますけど……。せっかくピットのポジションも前の方で、それをまったく活かせなかったのは本当に残念だし、こんなに早々に、こんなカタチでリタイアすることになるとは思ってもいなかったんで、凄く残念。
——トニー・カナーンはいいレースを戦っていた。琢磨選手も同じ戦いができていたのでしょうね。
佐藤琢磨:はい、そうですね。
——話題はガラッと変わりますが、今年のゴールを見て何を感じましたか?
佐藤琢磨:あれが経験なのかなぁ……っていうのはありますよね。ラップダウンのクルマとの速度差が凄かったので、抜かそうと思ってああなったんだと思います。アウトからパスをしようとして、タイヤかすに乗ってしまった。アウトに出るなら、相当スピードを落とさないと。まさにマーブルに乗っちゃったって感じでしたね。
——クルーたちにとっても悔しい結果でしたね。
佐藤琢磨:はい。もう、ホントに物凄い残念。ずーっと準備してきたことが一瞬にして……ですから。誰かに横に並ばれたなら、先に行かせてその後を追っかければいいだけの話で、何も踏ん張る必要はないし、2ワイドのまま入ってく必要もまったくない。そんなのは自殺行為ですからね。
——去年はレース中に順位を上げて行けた。2年目の今年は、さらに良い戦いを見せることができるはずだったんですよね?
佐藤琢磨:そうなんですよ。僕としては、まだスタートしたばかりで何の心配もしてなかった。コーナーは2ワイドでは走り抜けられない。それは十分にわかってるのでね。本当に残念です。
Photo:Naoki Shigenobu |
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本当に残念なレースだったけど、ストーリーはこれから始まるんだと思います。
返信削除頑張ってください。そしてチームワークも大切に!
応援しています。
徳樹 さん、とても残念なレースでしたね。
返信削除想像もしなかった展開でした。でも前戦ブラジルではリードラップ、今回、世界一のオーバルトラックで予選10位と、徳樹 さんが言うように、この先に何かすごい物語があるのだと思います。次戦以降も目が離せませんよ!(更新係)
匿名でわるいけど、あれはないわ。
返信削除この先?たぶん無いと思いますよ。
いつになったらクラッシャーの汚名返上するんですか・・
チームクルーの冷めた視線、「またやったな」って感じ。
こっちが辛くなってしまいました。
お願いだから成長した、成熟したドライビングを見せて。
何も変わってないよ・・ 正念場なんだから・・
匿名さん、オーバルにおいてスポッターとのコミュニケーションはかなり重要なようです。ちょうどラリーでペースノートなしの有視界走行では全くタイムがでず、勝負にならないと同じで、情報がないと権利もないということですね。
返信削除匿名さんが心苦しくなる必要はありませんよ。大丈夫です、テキサスの予選でも2位となって、スピードは十分発揮しています。あとはその時が来るのを待つだけです。
もう少し、リラックスして応援しましょう!(更新係)