第2戦ホンダ・インディ・グランプリ・オブ・アラバマでトニー・カナーン(KVレーシング・テクノロジー・ロータス)は、最後尾に近い24番手のスターティング・グリッドから6位でフィニッシュした。3ストップ作戦が成功してのものであったが、それ以上に効果があったのは、最初のスタートでの10人抜きだった。タイヤがまだ暖まっていない状態でのオーバーテイク……というよりごぼう抜き。その秘密をカナーンは、「アウト側のグリップの低いところを走ること。スタート直後はまだスピードがまだ乗っていないので、思い切り走っているラップだったらグリップのない部分でも、スピードが低いのでタイヤがくっついてくれるんだ。みんながイン側の普段からグリップのある部分に殺到している間に僕はターン2でアウト側から大勢をパスできた」と語った。アッサリと種を明かしたのは、理屈がわかったからといって誰にでもホイホイこなせるワザではないという自信の表れなのだろう。
Photo:INDYCAR(LAT) |
3ストップ作戦、ファーストラップのごぼう抜き、そして、カナーン陣営のタイヤ戦略も見事だった。多くのドライバーがレッド(ソフトタイプ)の新品でスタートしたのに対して、カナーンはブラック(ハードタイプ)でのスタートを選んだ。そして、ゴールまでに行った3回のピットストップで、彼は3回ともレッドを装着した。3ストップであった上に、新品のレッド/予選で使ったレッド/新品のレッドと次々投入した作戦が、上位フィニッシュにこれまた大きく貢献したのだ。
アンドレッティ・オートスポートのライアン・ハンター-レイとダニカ・パトリックも、カナーンと同じ3ストップ作戦だった。しかし、彼らはそれを成功に繋げることができなかった。ハンター-レイはカナーン同様にレッド3セット投入で成功を掴みつつあったが、ライアン・ブリスコー(チーム・ペンスキー)をパスしようとして接触し、上位フィニッシュを逃した。ブリスコーをリタイアに追い込んだアタックをオフィシャルは不用意かつ強引と判定してペナルティを課したのだ。ハンター-レイはトップと同一周回の最後尾である15位まで後退させられ、14位でレースを終えた。
レッドでのロングスティントが裏目に出たダニカ
ダニカはレッドで走った中盤、2ストップ組がブラック装着だったこともあって順位をどんどん上げて行き、今年はシモーナ・デ・シルベストロ(HVMレーシング)に奪われっぱなしの注目度を取り戻していた。しかし、最後のピットストップでチームが選んだ作戦はタイヤ交換なし。レッドでのダブルスティントというものだった。
ピットアウトしたダニカは3位にまでポジションを上げていたが、すでに21周を走っていたタイヤで、残り30周もハイペースを保つことは不可能だった。残り20周頃から大きくラップタイムが落ち、次々と後続にパスされた彼女は17位でゴールした。
ダニカ陣営とすれば、2回目のピットストップでレッドを装着した後にコーションラップが8周もあったので、最後のスティントも大きなパフォーマンスロスなしに走れると踏んだのだろう。レース終盤にフルコースコーションが重なり、フルスピードで走る周回数が少なくなることも期待していたかもしれない。その時点までで5回ものコーションが今年は出されていたので……。
さらに関連する話を次のコラムで。
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