開幕はもう目前というところで突如発表されトニー・カナーン=TKのKVレーシング・テクノロジー・ロータスからの参戦。彼の担当エンジニアにはマイケル・キャノンが起用されることになった。昨年HVMレーシングで走った女性スイス人ドライバー=シモーナ・デ・シルベストロにインディ500とシリーズのルーキー・オブ・ザ・イヤー賞を取らせた担当エンジニアだ。
キャノンの採用が発表された時、彼とカナーンは以前に一緒に働いたことあるのとか考えたが、そういう過去はなかった。今回の仕事には彼が適役だと、KVが見つけてきたのだった。
シモーナ・デ・シルベストロ Photo: INDYCAR(Dan Helrigel) |
開幕2週間前にバーバー・モータースポーツ・パークで行なわれたオープン・テスト、キャノンはシモーナのマシンをみていた。ふたりは昨年に続いて協力して働いて行くこととなっていたのだ。
ところが、キャノンは突然の移籍を決意した。
レース・エンジニアをさらわれたHVMレーシングは、当然、代わりを見つけなくてはならなかった。彼らはパンサー・レーシングでアシスタント・エンジニアを勤めるブレント・ハーベイに目をつけ、彼にオファーを出した。松浦孝亮を担当していたこともある通称“ウッディー”だ。彼もまたバーバーででのテスト時にはパンサーで仕事をしていた。デイビッド・クリップスというエンジニア(高木虎之介を担当していたこともあり)をサポートしていたのだ。そして、ウッディーは自分がメインのエンジニアとして働くHVMへ、開幕直前になって引っ越すこととなった。
それぞれの実力を証明するために全力を尽くした両陣営のバトル
キャノンは突然HVMからKVへ、ウッディーはパンサーからHVMへと移籍した。これらが開幕直前で玉突き的に起きた。そして、一番ワリを食ったのはパンサーということになった。彼らはウッディの代わりを見つけられずにセント・ピーターズバーグのレースを迎えることになってしまったからだった。人材の引き抜きはこれまでにもアチコチで行われてきているが、ここまで開幕が近づいての移籍は珍しい。とか言いながら、今年はクルーの中にもテスト時とは違うユニフォームを着ている者もいた。
シモーナがレース終盤に攻略しかけた相手は、自分のエンジニアを開幕目前に奪ったカタチのTKだった。結局シモーナはパスができなかったが、今回のレースによって、彼女はマシンを造り上げる能力があること、走らせる能力も備えていること、両方が証明された。4位フィニッシュは立派な結果。もちろん、あとひとつ上げて3位だったら、もっともっと嬉しかっただろうが……。
逆にKVに移ったエンジニアのキャノンとすれば、自分の担当するベテラン・ドライバーが頑張ってくれ、シモーナにパスされずに済んで本当にホッとしていることだろう。
表彰台で喜ぶトニー・カナーン(左) Photo: INDYCAR(Chris Jones) |
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